東京都の太陽光・蓄電池の助成は、全国の自治体と比べても手厚い部類に入るのは事実です。ただし「もらえる前提」で話を進めると、金額の前提条件や手続きの順番を一つ間違えただけで助成が1円も出ない、ということが起こり得ます。この記事では、令和8年度(2026年度)の制度を「金額」と「順番」の両面から点検します。
太陽光: 既存は15万円/kW、新築は12万円/kW
見出しの数字は代表的な単価ですが、実際には容量区分によって単価が変わります。東京都の「家庭における太陽光発電導入促進事業」では、既存住宅は3.75kW以下で15万円/kW(上限45万円)、3.75kWを超えると12万円/kW(50kW未満まで)になります。新築住宅は3.6kW以下で12万円/kW(上限36万円)、3.6kWを超えると10万円/kWです。いずれも助成対象経費の合計金額が上限となります。
| 区分 | 容量 | 単価 | 上限額 |
|---|---|---|---|
| 新築住宅 | 3.6kW以下 | 12万円/kW | 36万円 |
| 新築住宅 | 3.6kW超〜50kW未満 | 10万円/kW | - |
| 既存住宅 | 3.75kW以下 | 15万円/kW | 45万円 |
| 既存住宅 | 3.75kW超〜50kW未満 | 12万円/kW | - |
計算例として、既存住宅に5kWを載せる場合は12万円×5kWで60万円、新築に3kWを載せる場合は36万円(上限額と一致)になります。このほか、陸屋根への架台設置(集合住宅20万円/kW、既存戸建10万円/kW)、防水工事(既存住宅のみ18万円/kW)、優れた機能性を持つ太陽光発電システムへの上乗せ、リフォーム瑕疵保険(1契約7,000円)といった加算メニューもあります。対象は未使用品で、都内の住宅またはその敷地内に新規設置し、発電した電気を居住部分で使うこと、モジュールがJET認証などを受けていること、出力50kW未満であることが条件です。単価は容量区分で変わるため、自分の設置規模がどの区分に入るかを先に確認する必要があります。
物差しとして、家庭用太陽光の設置費用は2025年の新築平均で28.9万円/kWでした(国の調達価格等算定委員会の集計)。既存向けの15万円/kWは、その半分ほどにあたります。助成が大きい分だけ、見積もりの単価が割高になっていないかの点検も欠かせません。
蓄電池: 10万円/kWh、ただし太陽光との組が条件
蓄電池の新設(蓄電池パッケージ)は10万円/kWhで、助成対象経費(税抜)が上限、DR実証に参加しない場合は上限120万円/戸です。計算例として10kWhを新設する場合、助成対象経費がそれ以上あれば10万円×10kWhで100万円になります。ただしこの単価が使えるのは、太陽光発電システムが設置済みか同時設置である場合に限られます。太陽光がない場合は、都が定める再生可能エネルギー電力メニュー(再エネ利用率100%)への契約が条件です。DR実証に参加すると10万円の加算、DRに必要なエネルギーマネジメント機器・IoT機器を設置すると1台あたりさらに5万円の加算があります。増設(蓄電ユニット増設)は6万円/kWh(DR不参加時は上限72万円/戸)で、こちらも太陽光が設置済みであることが条件です。
対象機器はSII(環境共創イニシアチブ)の登録機器に限られ、2026年10月1日以降に事前申込をする場合は、令和8年度の登録済製品一覧に載った機器しか対象になりません。見積もりを取った機器が最新の一覧に載っているかは、申込直前にも確認が必要です。蓄電池単体では助成の土台にすら乗らず、太陽光とのセット、または再エネメニュー契約が前提条件になっています。
費用の物差しとして、家庭用蓄電池は標準的な水準で設備費と工事費を合わせて17〜22万円/kWh程度とされ、10万円/kWhの助成はその半分前後にあたります。なお、国の家庭用蓄電池向けDR補助金は2026年5月29日に受付を終了しており、いま家庭向けの公的支援の主役は、都や区市町村の制度に移っています。
前提チェック1: 事前申込は契約の前
手続きの流れは「事前申込(見積書を添付)→受付→契約・工事→支払い→交付申請兼実績報告→審査→入金」の順です。令和8年度の事前申込は2026年5月29日に開始し、交付申請兼実績報告の受付は2026年6月30日から2029年3月30日までです。事前申込より先に工事会社と契約を結んでしまうと、対象外になる可能性があります。また令和8年度の申込分からは、実績報告の際に金融機関が発行する証明書等の提出が必須になりました。提出書類が一つ増えた形になるため、早めに確認しておくと安心です。助成は「契約前に申し込んで受け付けてもらう」ことが起点で、工事を先に進めてしまうとやり直しがききません。
前提チェック2: 予算と年度の壁
この事業は予算がなくなり次第、受付が終了する仕組みで、事前申込額の予算消化割合は公表されています。また単価は年度ごとに見直されており、実例として蓄電池の新設単価は令和7年度の12万円/kWhから、令和8年度は10万円/kWhに変更されました。「今年の単価がそのまま来年も続く」という前提は置けません。検討を先延ばしにしている間に、単価が変わっているか、予算そのものが尽きている可能性があります。申し込むタイミングの年度の単価と予算残を、その都度確認することが欠かせません。

助成の金額だけを見て安心せず、「いつ申し込むか」「どの順番で動くか」まで含めて制度だと考えると、後から慌てずに済みます。
前提チェック3: 併用はできるが、二重取りにはならない
東京都の助成は、国や区市町村の補助金と組み合わせられる場合があります。ただし都の助成額を計算する際には、助成対象経費から国・他の自治体の補助金をあらかじめ差し引くため、合計額が対象経費を超える二重取りにはなりません。また、都・公社が実施する他の同種の助成金との重複受給はできません。区市町村が独自の上乗せ助成を用意している場合もありますが、金額は自治体ごとに異なるため、お住まいの自治体の制度を個別に確認する必要があります。併用は「経費を補い合う」仕組みであって、「同じ工事費に対して複数の財布から満額ずつ受け取れる」仕組みではありません。
新築の義務化との関係
2025年4月に始まった建築物環境報告書制度で義務を負うのは、家を買う・建てる個人ではなく、1年間に都内で延べ面積2,000㎡未満の建物を合計2万㎡以上供給する大手ハウスメーカー等の特定供給事業者です。義務の内容は、断熱・省エネ性能の確保、再エネ利用設備(太陽光発電設備等)の設置、EV充電設備等の設置、購入者への環境性能の説明、建築物環境報告書の提出です。再エネ設置の基準は1棟ごとではなく事業者全体で達成する仕組みであり、既存住宅は対象外です。つまり新築を検討する場合、「太陽光を付けるかどうか」を自分で決める段階というより、「標準で付く前提で、価格への転嫁と使える助成の扱いを確かめる」段階に入っていると言えます。新築の義務化は個人への義務ではなく、供給側の事業者への義務である点を誤解しないことが前提になります。
まとめ: 申し込む前のチェックリスト
- 契約を結ぶ前に、事前申込(見積書添付)を済ませているか
- 自分の設置が新築・既存のどちらの区分で、容量が単価の境目(3.6kW/3.75kW)のどちら側に入るかを確認したか
- 蓄電池は太陽光が設置済み・同時設置か、太陽光がない場合は再エネ電力メニューに契約しているか
- 見積もり機器がSIIの登録機器で、申込時期によっては令和8年度の登録済製品一覧に載っているか
- 予算消化の公表状況を確認し、受付終了の可能性を織り込んでいるか
- 国・区市町村の補助金と併用する場合、助成対象経費から差し引かれる計算の仕組みを理解しているか
出典: クール・ネット東京(東京都環境公社)の令和8年度事業ページ(家庭における太陽光発電導入促進事業/家庭における蓄電池導入促進事業)、東京都環境局「建築物環境報告書制度」および令和8年度助成メニュー、経済産業省・調達価格等算定委員会資料(設置費用の平均)。2026年11月5日確認。

“東京都の制度、手厚いのは本当です。でも「申し込む前に契約しない」「単価は毎年変わる」「二つの財布から満額ずつはもらえない」。この3つだけは、電卓を叩く前に覚えておいてください。