太陽光(家庭用)

家庭用太陽光発電の前提チェック

家庭の屋根の太陽光は、投資商品ではなく暮らしの道具として見るのがこのサイトの立場です。とはいえ、決して安い買い物ではありません。売電価格・設置費用・自家消費率の3つの前提を、公表数字で点検します。

屋根に太陽光パネルを載せ、脇に家庭用蓄電池を置いた住宅

公開日: 2026年11月5日|蓄電・太陽光ラボ

前提その1: 売電価格は「最初の4年が24円、その後8.3円」

2025年10月、住宅用太陽光(10kW未満)の買取制度が大きく変わりました。初期投資支援スキームの導入で、認定から最初の4年間は24円/kWh、5〜10年目は8.3円/kWhという2段階の価格になりました。それまでは10年間一律(2025年度上半期は15円/kWh)でした。買取は、自宅で使い切れなかった分だけを売る「余剰買取」で、期間は10年間です。

認定の時期買取価格(10kW未満・余剰買取)
2025年9月まで15円/kWh(10年間一律)
2025年10月以降24円/kWh(1〜4年目)→ 8.3円/kWh(5〜10年目)
高い段から低い段へ下りる、2段階の買取価格のイメージ

注意したいのは、24円は「前倒しの支援」であって、10年間の総額が大きく増える制度ではないことです。10年間の加重平均は14.58円/kWhで、従来の15円とほぼ同じ水準です。さらに、5年目以降の8.3円は、買取期間が終わった後(卒FIT)の買取例として示される価格(東京電力エナジーパートナーの8.5円/kWh)をも下回ります。「24円が続く」前提で組まれた試算は、5年目に大きく崩れます。営業資料の単価が何年目まで続く価格なのかを、必ず確認してください。

前提その2: 本体は売電ではなく、自家消費

屋根の太陽光パネルから分電盤へ電気が流れる図解

いまの家庭用太陽光の経済的な本体は、売電収入ではありません。電力会社から買う電気には、電力量料金に加えて再エネ賦課金3.98円/kWh(2025年度)なども乗り、1kWhの価値は売電単価よりずっと高くなります。発電した電気を自宅で使えば、その「買うはずだった電気」がまるごと浮きます。家庭用太陽光は「売って稼ぐ設備」から「買わずに済む設備」へ。見方が変わると、点検すべき数字も変わります。

鍵になるのが自家消費率(発電量のうち自宅で使えた割合)です。制度設計の想定は30%で、国への定期報告を集計した実績では、余剰として売電に回る比率が平均64.8%——つまり自家消費率は実績平均で35%前後でした。日中に在宅する家庭は高く、昼間不在が多い家庭は下がります。試算で自家消費率を50%や70%に置いている資料があったら、それは「平均的な家庭」ではなく「工夫した家庭」の数字だと受け止めてください。

前提その3: 設置費用は「kW単価」で比べる

費用の物差しは、総額ではなく1kWあたりの単価です。国の調達価格等算定委員会の集計では、2025年に設置された住宅用システムの平均は新築で28.9万円/kW(中央値29.4万円/kW)、既築では30.1万円/kWでした。5kWのシステムなら新築平均で約144.5万円という計算です。内訳ではパネル本体よりも、工事費などの占める割合が約3割と大きく、見積書では「一式」表示の中身を開いて比べることが大切です。

もうひとつ、導入時には見えにくい費用があります。電気を家庭用に変換するパワーコンディショナは寿命のある機器で、使い方の期間の途中で交換費用がかかる前提を置くべきです。「初期費用÷年数」だけで回収年数を出す試算は、この後年の費用を落としていることが少なくありません。

ビリペン

昼に貯めて夜に使う暮らしは、数字の面でも安心の面でも心強いものです。お金の効果と暮らしの安心は、分けて数えるのがこのサイト流です。

蓄電池と組にすると、何が変わるか

太陽と月のモチーフとともに、昼に貯めて夜に使う家庭用蓄電池のイメージ

家庭用蓄電池を組み合わせると、昼の余剰を夜に回せるため、自家消費率は50〜70%程度まで上がると各社の試算では言われます(これは公的な実績統計ではなく、あくまで目安です)。買う電気が減る効果に加えて、停電のときに電気が使えるという、金額に換算しにくい価値も生まれます。

ただし、蓄電池の費用は太陽光とは別にかかります。蓄電池の価値は「自家消費の押し上げ」と「災害時の備え」の2つに分けて考え、換算しにくい安心まで利回りの数字に混ぜないことが、冷静な判断につながります。太陽光と同時に入れるか、卒FITのタイミングで後付けするかは、価格の2段階(24円→8.3円)の境目とも関わるので、あわせて検討したいところです。

まとめ: 契約前のチェックリスト

家庭用太陽光は、数字の前提さえ正直に置けば、今も合理的な暮らしの道具です。逆に、前提が楽観的すぎる試算は、どの家庭でも成り立ちません。次は、規模も制度も違う事業用太陽光の前提も並べてみます。

出典: 経済産業省「再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2025年度以降の調達価格等について」(2025年3月21日発表、初期投資支援スキーム・再エネ賦課金3.98円/kWh)、資源エネルギー庁「買取価格・期間等」、調達価格等算定委員会資料(システム費用・余剰売電比率)。東京電力エナジーパートナーの卒FIT買取価格は同社公表の例示(いずれも2026年11月5日確認)。

ビリペン
ビリペンのひとこと

“屋根の太陽光は、売るためより「買わずに済む」ために。前提をそろえてから考えると、後悔の少ない選択になります。

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