前提その1: 売電価格は「最初の4年が24円、その後8.3円」
2025年10月、住宅用太陽光(10kW未満)の買取制度が大きく変わりました。初期投資支援スキームの導入で、認定から最初の4年間は24円/kWh、5〜10年目は8.3円/kWhという2段階の価格になりました。それまでは10年間一律(2025年度上半期は15円/kWh)でした。買取は、自宅で使い切れなかった分だけを売る「余剰買取」で、期間は10年間です。
| 認定の時期 | 買取価格(10kW未満・余剰買取) |
|---|---|
| 2025年9月まで | 15円/kWh(10年間一律) |
| 2025年10月以降 | 24円/kWh(1〜4年目)→ 8.3円/kWh(5〜10年目) |
注意したいのは、24円は「前倒しの支援」であって、10年間の総額が大きく増える制度ではないことです。10年間の加重平均は14.58円/kWhで、従来の15円とほぼ同じ水準です。さらに、5年目以降の8.3円は、買取期間が終わった後(卒FIT)の買取例として示される価格(東京電力エナジーパートナーの8.5円/kWh)をも下回ります。「24円が続く」前提で組まれた試算は、5年目に大きく崩れます。営業資料の単価が何年目まで続く価格なのかを、必ず確認してください。
前提その2: 本体は売電ではなく、自家消費
いまの家庭用太陽光の経済的な本体は、売電収入ではありません。電力会社から買う電気には、電力量料金に加えて再エネ賦課金3.98円/kWh(2025年度)なども乗り、1kWhの価値は売電単価よりずっと高くなります。発電した電気を自宅で使えば、その「買うはずだった電気」がまるごと浮きます。家庭用太陽光は「売って稼ぐ設備」から「買わずに済む設備」へ。見方が変わると、点検すべき数字も変わります。
鍵になるのが自家消費率(発電量のうち自宅で使えた割合)です。制度設計の想定は30%で、国への定期報告を集計した実績では、余剰として売電に回る比率が平均64.8%——つまり自家消費率は実績平均で35%前後でした。日中に在宅する家庭は高く、昼間不在が多い家庭は下がります。試算で自家消費率を50%や70%に置いている資料があったら、それは「平均的な家庭」ではなく「工夫した家庭」の数字だと受け止めてください。
前提その3: 設置費用は「kW単価」で比べる
費用の物差しは、総額ではなく1kWあたりの単価です。国の調達価格等算定委員会の集計では、2025年に設置された住宅用システムの平均は新築で28.9万円/kW(中央値29.4万円/kW)、既築では30.1万円/kWでした。5kWのシステムなら新築平均で約144.5万円という計算です。内訳ではパネル本体よりも、工事費などの占める割合が約3割と大きく、見積書では「一式」表示の中身を開いて比べることが大切です。
もうひとつ、導入時には見えにくい費用があります。電気を家庭用に変換するパワーコンディショナは寿命のある機器で、使い方の期間の途中で交換費用がかかる前提を置くべきです。「初期費用÷年数」だけで回収年数を出す試算は、この後年の費用を落としていることが少なくありません。

昼に貯めて夜に使う暮らしは、数字の面でも安心の面でも心強いものです。お金の効果と暮らしの安心は、分けて数えるのがこのサイト流です。
蓄電池と組にすると、何が変わるか
家庭用蓄電池を組み合わせると、昼の余剰を夜に回せるため、自家消費率は50〜70%程度まで上がると各社の試算では言われます(これは公的な実績統計ではなく、あくまで目安です)。買う電気が減る効果に加えて、停電のときに電気が使えるという、金額に換算しにくい価値も生まれます。
ただし、蓄電池の費用は太陽光とは別にかかります。蓄電池の価値は「自家消費の押し上げ」と「災害時の備え」の2つに分けて考え、換算しにくい安心まで利回りの数字に混ぜないことが、冷静な判断につながります。太陽光と同時に入れるか、卒FITのタイミングで後付けするかは、価格の2段階(24円→8.3円)の境目とも関わるので、あわせて検討したいところです。
まとめ: 契約前のチェックリスト
- 売電単価は24円(4年間)→8.3円の2段階で試算されているか
- 自家消費率を何%で置いているか(実績平均は35%前後)
- 見積はkW単価で比べたか(2025年の新築平均は28.9万円/kW)
- パワーコンディショナの交換など、後年の費用を織り込んでいるか
- 10年後(卒FIT)に、売る先・使い道をどうするか考えているか
家庭用太陽光は、数字の前提さえ正直に置けば、今も合理的な暮らしの道具です。逆に、前提が楽観的すぎる試算は、どの家庭でも成り立ちません。次は、規模も制度も違う事業用太陽光の前提も並べてみます。
出典: 経済産業省「再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2025年度以降の調達価格等について」(2025年3月21日発表、初期投資支援スキーム・再エネ賦課金3.98円/kWh)、資源エネルギー庁「買取価格・期間等」、調達価格等算定委員会資料(システム費用・余剰売電比率)。東京電力エナジーパートナーの卒FIT買取価格は同社公表の例示(いずれも2026年11月5日確認)。

“屋根の太陽光は、売るためより「買わずに済む」ために。前提をそろえてから考えると、後悔の少ない選択になります。