太陽光

BIPV・窓と壁の太陽光(建材一体型)の現状

屋根の次は、窓と壁が発電面になる。ただし現時点では「買える建材」ではなく「開発・実証の段階」が中心。建材としての現状を整理します。

発電する窓ガラスを持つビル

太陽光発電というと、屋根に架台を立ててパネルを載せる姿を思い浮かべる人が多いはずです。しかし次に来るのは「屋根の次」の話で、窓ガラスそのもの、壁そのものが発電するBIPV(Building Integrated Photovoltaics、建材一体型太陽光発電)です。ただし誤解してはいけないのは、BIPVは2026年11月時点でまだ「買える建材」ではなく、「開発・実証が進んでいる建材」が中心だという点です。本記事では発電量の話だけでなく、建材としての現状と制約を点検します。

BIPVとは何か: 建材そのものが発電する

BIPV(Building Integrated Photovoltaics)は、屋根材・ガラス・ファサード(外壁)・手すり・バルコニーといった建材そのものに発電機能を組み込む仕組みです。既存の屋根の上に架台でパネルを載せる通常の太陽光はBAPV(Building Applied Photovoltaics)と呼ばれ、区別されます。BIPVでは建材の費用の一部が発電設備の費用と重なるため、単純に「パネル代+建材代」という足し算にはなりません。ただし費用の内訳は製品・部位によって大きく異なるため、金額の比較は本記事では行いません。

種類対象部位
屋根材一体型瓦・シングル型など、屋根の面そのものが発電
ガラス型窓ガラス・天窓・カーテンウォールに発電層を組み込む
ファサード型外壁の化粧パネル・スパンドレル部に組み込む
小部位型手すり・バルコニー・庇など

パナソニックHDは、施工やメンテナンスが容易な部位から導入を始め、天窓やファサード、建物の主要な外皮へ段階的に広げる構想を示しています。BIPVは「屋根の次に、窓と壁が発電面になる」という建材の話であり、発電量だけを単純に比較する話ではありません。

発電層を組み込んだ窓ガラスに日差しが差し込む図解

ガラス型ペロブスカイトの現在地

ペロブスカイト太陽電池は、インク状の材料をガラスやフィルムに塗って作れる日本発の太陽電池です。軽くて曲げられる「フィルム型」と、ガラスの間に発電層を閉じ込めた「ガラス型」の2種類があり、BIPVとして窓やファサードに使われるのは主にガラス型です。

パナソニックHDのガラス型は、2026年9月に大阪府守口市の拠点で先行量産品(数量限定)の販売を開始しました。本格量産は当初計画の2030年度から1年前倒しし、2029年4月に滋賀県長浜拠点で開始する予定です。モジュールは約30cm角(804cm²)で、変換効率は18.1%(第三者機関の認証値)とされています。神戸市の中突堤中央ターミナル「かもめりあ」では2026年9月24日から運用を開始したほか、YKK APとの共同で、ガラス型ペロブスカイトを内窓に用いたBIPVの実装検証を谷町YFビルで開始したと2025年11月20日に発表されています。

項目目標値
大型モジュール出力(1.2m×1.8m)330W
20年後の出力維持率80%以上
規格準拠IEC61215・IEC61730
日射熱取得率/熱貫流率0.4以下/2.9以下
ガラス板厚3〜6mmで既存品と同程度の品質
発電コスト14円/kWhの実現に資する量産技術の確立

これらはあくまで開発目標であり、市販品の仕様値ではありません。2026年11月時点で、戸建て住宅向けの発売時期を公表したメーカーはなく、価格も一律には決まっていません。話題性の先行で導入時期を見誤らないよう注意が必要です。

太陽光パネルを組み込んだビルのファサードの図解

建材としてのハードル: 強度・断熱・価格

パナソニックHDは、建築基準に合う強度・厚みのガラスに発電膜を塗り、合わせガラスにして外気を遮る構造にしています。同社は「建築に携わる方が通常のガラスと同じように扱えるよう、建築基準法や関連規格に準拠させることが前提」と説明しており、BIPVは建物の一部になるため建築確認の対象になるのが一般的な整理です。設計・施工・維持管理の既存の流れに無理なく組み込める建材であることが求められます。

品質・信頼性の試験条件や認証プロトコルはまだ未確立で、一般社団法人日本ペロブスカイト太陽電池普及促進協議会が2026年5月に設立され、標準化・リサイクルといった共通課題への取り組みが始まった段階です。価格面では、ガラス型ペロブスカイトは現時点で通常の建築ガラスの数倍とされ、「まずは5倍以下をスタート価格に」することが同社の取り組み目標として報じられていますが、市販価格の公表はまだないため、金額の比較は本記事では行いません。強度・断熱・価格・認証のいずれも発展途上であり、現時点では「導入を急ぐ建材」ではないというのが実情です。

屋根材一体型の太陽光瓦を載せた住宅の図解

制度の追い風: 省エネ基準と新築のルール

改正建築物省エネ法により、2025年4月からすべての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が義務化されました。国土交通省は遅くとも2030年までにZEH水準への引き上げを予定しています。東京都の建築物環境報告書制度は2025年4月から施行され、1年間に都内で延べ面積2,000㎡未満の建物を合計2万㎡以上供給する特定供給事業者(大手ハウスメーカー等)に対し、断熱・省エネ性能の確保や再エネ利用設備(太陽光発電設備等)の設置等を求めています。この制度の対象は建物供給事業者であり、購入者・施主個人ではない点に注意が必要です。

第7次エネルギー基本計画は2040年の電源構成で太陽光23〜26%を目指すとしており、政府の次世代型太陽電池の導入目標は2040年に約20GW(大幅なコスト低減が進んだ場合は約40GW〜)です。いずれも目標であり、実績ではありません。なお屋根設置の太陽光(10kW以上)については、初期投資支援として19円(〜5年)・8.3円(6〜20年)が2027年度認定分まで設定されていますが、屋根一体型がこの屋根設置区分として扱われるかは認定申請時の確認が必要であり、BIPVへの適用を断定するものではありません。フィルム型ペロブスカイトについては専用のFIT/FIP発電設備区分は現時点でなく、「創設を検討」の段階です。

向くケース・向かないケース

向くのは、新築・大規模改修のタイミングで建物の設計に発電を組み込める場合です。BIPVは後付けではなく、設計段階で決める建材であり、窓や外壁の面積が大きく方位・角度が良い建物、省エネ基準・ZEH水準への対応とセットで検討できる場合に適しています。

向かないのは、既存の建物に後付けで発電量を増やしたいだけの場合です。その用途には通常の屋根置き型のほうが向いています。また、市販価格・保証条件が固まっていない段階で投資回収の数字を求める場合や、発電量だけを屋根置き型と同じ物差しで比べようとする場合も向きません。壁面は屋根より発電量が少なくなるのが前提です。建築確認・維持管理の体制が整っていない場合も、現時点では避けたほうが無難です。BIPVは「発電の道具」である前に「建物の一部」であり、建築の判断軸で考えるべき建材です。

ビリペン

窓や壁が発電するという話は未来感が強いぶん、「もう買える建材」だと誤解されやすい領域です。開発段階の情報と、販売中の情報を分けて見る習慣が大切です。

まとめ: BIPVを検討する前のチェックリスト

出典: パナソニック ホールディングス「ガラス型ペロブスカイト太陽電池」、NEDO「グリーンイノベーション基金事業/次世代型太陽電池の開発」成果報告会資料(2026年7月22日)、経済産業省「次世代型太陽電池戦略」(2024年11月)、国土交通省「省エネ基準適合義務化」、東京都環境局「東京都建築物環境報告書制度」、経済産業省「2026年度以降の買取価格等」(2026年3月公表)。2026年11月6日確認。

ビリペン
ビリペンのひとこと

“窓が発電するって聞くとワクワクするけど、ボクが確認すべきは夢の大きさじゃなくて「今、建材として成立しているか」ってことだよ。設計図に書き込めるのはいつか、焦らず見極めよう。

あわせて読みたい
ペロブスカイト太陽電池の前提チェック →
家庭用太陽光発電の前提チェック →
数字で確かめたい方は、トップページのかんたん収支シミュレーションで保守ケースを試算できます。