太陽光

営農型太陽光(ソーラーシェアリング)の前提チェック

農地の上にパネルを載せ、下で農業を続ける仕組み。発電だけが目的の「農地の太陽光」とは制度が違う。一時転用許可の条件と2027年の新基準を整理します。

高い支柱の上の太陽光パネルとその下の野菜畑

太陽光パネルを農地の上に設置し、その下で農業を続ける――これが営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の基本的な考え方である。発電だけを目的に農地を転用する一般的な「農地の太陽光」とは、許可の種類も継続のための条件もまったく異なる仕組みだ。本記事では、制度の枠組みと公表されている実績データ、そして2027年4月に控える新基準までを、検証できた数字の範囲で点検する。

営農型太陽光とは何か: 一時転用許可の仕組み

営農型太陽光発電とは、一時転用許可を受け、農地に簡易な構造でかつ容易に撤去できる支柱を立てて、上部空間に太陽光発電設備を設置し、営農を継続しながら発電を行う事業を指す。制度の法的な位置づけは農地法第4条または第5条の転用許可に対する条件設定であり、営農型固有の取扱いを直接定めているのは農林水産省の通知である。2013年3月の通知で取扱いが明確化され、2024年4月1日からは通知で定めていた基準が農地法施行規則に格上げされ、具体的な考え方はガイドラインで運用されている。

一時転用期間は通常3年以内だが、①認定農業者等の担い手が下部の農地で営農を行う場合、②遊休農地を活用する場合、③第2種農地または第3種農地を活用する場合のいずれかに該当すれば10年以内まで認められる。この10年への延長は2018年5月の通知改正によるもので、それまでは一律3年だった。再許可も可能だが、その際は従前の転用期間における営農状況が十分勘案される。自然災害や営農者の病気等やむを得ない事情があった場合は、その事情も考慮される。

営農型太陽光は「発電設備を農地に置く」のではなく「農地の上に発電設備を間借りさせる」制度であり、主役はあくまで下の農業である。

高い支柱に載った太陽光パネルの下で野菜畑が広がる図解

営農を続けるための条件

一時転用許可に当たっては、次の点がチェックされる。①転用期間が一定期間内(通常3年以内、条件該当時は10年以内)か、②下部の農地での営農の適切な継続が確実か、③毎年の栽培実績および収支の報告が適切に行われるか、④農作物の生育に適した日照量を保つ設計か、⑤効率的な農業機械等の利用が可能な最低地上高2m以上か、⑥地域計画の区域内の農地利用集積等に支障がないとして協議の場での合意が得られているか、である。

区分基準
一般的な農地平均的な単収と比較しておおむね2割以上減収しないこと(地域平均単収の8割以上を確保)
市町村で未栽培・栽培に時間を要する作物試験栽培実績または栽培理由書記載の単収より減少しないこと
品質生産された農作物の品質に著しい劣化が生じていないこと
遊休農地を活用する場合単収8割の基準は適用せず、「適正かつ効率的に利用されていること」(遊休化・捨作りをしないこと)

なお、当初許可時に遊休農地であっても、再許可時にはすでに遊休農地として扱われない点には注意が必要だ。年1回の報告により生産等への支障の有無がチェックされ、支障が生じている場合は現地調査の上で改善指導が行われ、従わない場合は是正勧告や原状回復命令に至ることもある。

農林水産省の統計(令和5年度末現在)によれば、2013年度から2023年度末までの累計許可件数は6,137件、下部農地面積は1,361.6ha、2023年度末時点で発電設備があるのは5,167件である。一方で、営農に支障がある(収量未達・生育不良など)と報告された設備は1,221件、報告のあった設備のおよそ24%(約4件に1件)に上る。支障の内容は営農者に起因する単収減少・生育不良が71%を占め、設備工事等の遅延が12%、災害等による単収減少・生育不良が7%、その他が10%となっている。続いている5,953件の作物構成は、観賞用植物36%、野菜類28%、果樹13%(件数ベース)である。営農不適切事例への対応として、2024年8月に6事業者15設備、同年11月に7事業者14設備でFIT/FIP交付が停止された。

報告対象のおよそ4件に1件で営農に支障が生じている実績は、「営農の継続」が制度上の建前にとどまらず、現実にも難易度の高い条件であることを示している。

FIT/FIPとの関係と2027年度の変わり目

営農型太陽光に専用のFIT価格区分は存在せず、地上設置区分として扱われる。2026年度の地上設置(10kW以上50kW未満)の調達価格は20年一律9.9円/kWh(買取期間20年)、50kW以上(入札対象外)は9.6円/kWhである。10kW以上50kW未満の新規認定には発電量の30%以上の自家消費と災害時の自立運転・給電用コンセント設置という地域活用要件があるが、営農型太陽光には例外があり、3年を超える農地転用許可が認められる案件であれば、自家消費を行わなくても災害時の活用が可能であればFIT制度の新規認定対象となる。50kW以上の事業用太陽光はFIP制度の対象で、2026年度からは50kW以上はFIPのみとなる。

地上設置(10kW以上)は2027年度以降、FIT・FIP制度における新規支援の対象外となる(2026年度の入札で落札した案件を除く)。つまり2026年度が地上設置のFIT新規認定の最後の年度であり、営農型であってもこの流れの外には立てない。

2027年度以降はFIT・FIPを前提に収支を組むこと自体ができなくなる点は、営農型・一般の地上設置を問わず認識しておく必要がある。

太陽光パネルの下を小型トラクターが通る農地の図解

2027年4月からの新制度

2025年10月9日付官報(号外第223号)で、農地法施行規則・農山漁村再エネ法施行規則の改正(農林水産省令第72号)と農山漁村再エネ法の基本方針(告示)改正が公布された。省令部分の施行は2027年4月1日、基本方針の基準そのものは2025年10月9日から適用されている。

以下は報道・解説で紹介されている改正後の数値基準であり、省令・告示の原文は記事執筆時点で直接確認できていないため「改正で導入される基準」として紹介する。

項目新基準(2027年4月施行予定)
遮光率原則30%未満(判定困難な場合は生育期間を通じた日射量減少率20%未満)
最低地上高おおむね3m以上
支柱間隔おおむね4m以上
単収同一年産の市町村区域内平均単収と比較しておおむね2割以上減少するおそれがないこと
農業の持続性年50万円以上の生産・販売実績等、業としての農業の持続性が確保されていること

基本方針は「米・麦・大豆は遮光率30%未満の環境でも適切な栽培管理を前提に単収を確保できる」ことを根拠としている。手続き面では、市町村が農山漁村再エネ法の基本計画に営農型太陽光を位置づけ、その計画に沿った設備整備計画の認定を受ける見込みがあることが、一時転用許可の条件になる見通しだ。市町村の基本計画の中では、地域の気候風土・作物特性に応じた特例的な対応を定めることもできるとされる。

ただし、農水省のサイトで好事例として示されている7例のうち5例までが遮光率30%以上であることが業界団体から指摘されており、遮光率30%未満という基準には現場から反発もある。これはあくまで業界団体の主張であり、農水省の公式見解ではない点には留意が必要だ。

好事例の多くが新基準を満たしていないという指摘がある以上、2027年4月以降の設計変更が既存案件・新規案件双方に与える影響は小さくないとみられる。

農地の上の太陽光パネルと農業用倉庫・電力量計の図解

向くケース・向かないケース

向くのは、営農の担い手がいて下部の農地で継続的に営農できる場合、遊休農地や第2種・第3種農地を活用して10年の許可期間が得られる場合、そして米・麦・大豆など遮光率30%未満でも単収を確保できるとされる作物を選べる場合である。

向かないのは、営農の担い手や継続体制がなく発電だけが実質的な目的になっている場合(支障報告が約24%に上る実績を踏まえる必要がある)、単収8割の基準や年1回の報告・収支報告の負担を受け入れられない場合、2027年4月からの新基準(遮光率30%未満・地上高おおむね3m以上など)を満たす設計にできない場合、そして2027年度以降は地上設置のFIT/FIP新規支援がなくなるためFIT前提の収支計画しか用意していない場合である。

営農型太陽光は「農業が続けられること」が大前提の制度であり、その前提が崩れれば許可も収益の根拠も同時に崩れる。

なお、営農型だけの設備費用・発電量・収益性に関する公的な集計は確認できていないため、kW単価や利回りの数字は本記事では扱わない。

ビリペン

営農型は「発電の片手間に農業をする」のではなく「農業を続けるために発電を間借りする」制度だという順番を、途中で見失わないことが大切だ。

まとめ: 営農型を検討する前のチェックリスト

出典: 農林水産省「営農型太陽光発電設備について」(令和6年4月改訂版)、農林水産省「営農型太陽光発電設備設置状況等について(令和5年度末現在)」、経済産業省「2026年度以降の買取価格等」(2026年3月公表)、農林水産省令第72号・官報(2025年10月9日)。2026年11月6日確認。

ビリペン
ビリペンのひとこと

“営農型は太陽光と農業の二刀流に見えるけど、審査するお役所も毎年の報告も「農業がちゃんと続いているか」しか見ていないんだね。パネルより先に、畑の方の覚悟が問われる仕組みってことか。

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